一人でカスタマーサービス、経理、シフト管理を改革したUSPACEのAI責任者、曾明賢氏:「AIによる変革を成功させるには、人間による支援は50%を超えてはならない」
曾明賢氏は今でも覚えている。2025年、USPACEのオフィスに足を踏み入れ、AI責任者として着任した初日、彼には専用のオフィスもなく、就任100日計画も用意されていなかった。COOは彼をカスタマーサービス部門に連れて行き、「まずはあちらを見て回ってみて」と言った。
当時、USPACEは急成長に伴う課題に直面していた。2016年に個人用駐車スペースのシェアリング事業としてスタートし、IoT(モノのインターネット)を活用したスマートロック技術によって事業領域を拡大。台湾から日本へと進出し、累計200万人以上の実名登録会員を獲得し、10万台分近くのスマート駐車スペースを管理するに至った。
事業の拡大に伴い、カスタマーサービスや経理などのバックオフィス部門への負担が増大し、AIを活用して業務効率を向上させる方法を検討するきっかけとなった。そこで、AI責任者のポストを新設し、社内のワークフローを刷新してAIの実用化を進めることを決定した。
各部門に赴き課題を洗い出し、解決策を考案。AIを活用した業務時間と省人化を実証
曾明賢氏の「Day 1」の任務に話を戻そう。カスタマーサービスチームは毎日1,000~2,000件の電話に対応しており、テキストによる問い合わせの量はさらに膨大だった。一部を外部委託していたものの、人的リソースでは依然として対応しきれない状況だった。ソフトウェアエンジニア出身の彼はすぐに対策を思いついた。すべての通話記録をAI分析にかけ、問題の発生頻度が最も高い拠点やタイプを迅速に特定した。AIカスタマーサービスシステムを導入後、3ヶ月以内に反復的な問題の40%を解決し、これにより4~5人分の余力を生み出すことができた。
就任当初、曾明賢氏はまさに「消火隊」としての役割を果たし、最も支援を必要とする部門へ赴いて問題を解決した。例えば、経理担当者が毎月月初に駐車場オーナーへ提出する報告書を作成する際、データは各決済プラットフォームに散在しており、以前は人手によって1件ずつダウンロードして照合していた。そこで彼はクローラープログラムを作成し、各プラットフォームのデータを自動的に取得して一元化させた。これにより、照合作業が手動から自動化され、約2日分の作業時間を削減できた。
しかし、もちろん「火消し」はAI責任者の主な職務ではない。「COOとAI責任者の職位設定について議論した際、私はCEO直属とするよう要求しました」と曾明賢氏は語る。AI責任者が組織内部のワークフローを解決するには、各事業部門を越えてコミュニケーションをとる権限が必要であり、それによって初めて変革を推進できるのだ。
次に、役割分担を明確にした。USPACEの既存の技術チームは、引き続き製品開発とシステム運用を担当する。一方、AI責任者の任務は別の軸を展開することだ。各部門内部のワークフローの効率化問題を解決し、全社員に力を与え、すべての事業部門の担当者がAIを活用できるようになることを目指す。
AIを真に定着させる「50%の法則」:従業員が半分以上を担い、自ら能力を育む
しかし、外部から招かれたAI責任者として、配下のチームや人材が全くいない状況で、どうすればよいのだろうか?
「最も重要なのは信頼を得ることだ」。曾明賢氏は「AIワン・オン・ワン」の時間を設け、毎週3日間、1日1~2時間を確保し、全従業員が自由に予約できるようにした。従業員は業務上の課題を持ち寄り、AIを活用して解決する方法を共に議論する。
彼は特に力の配分についてこう強調する。「私が提供する支援は、50%を超えてはならない」。その背後にある論理は、AI責任者が半分以上をこなしてしまうと、社員は自ら改善を重ねることができず、問題に直面してもまた自分を探しに来ることになり、永遠に自分の能力を育むことができないからだ。
例えば、あるカスタマーサービス責任者は、シフト編成の問題に長い間悩まされていた。早番、遅番、深夜・早朝シフト、休暇中の代役など、勤務時間がまちまちで、かつ労働基準法の労働時間規定も遵守しなければならないため、何度試しても適切なシフトが算出されなかった。彼はまず、その責任者にすべてのシフト作成ルールを口頭で整理させ、それを一つひとつ明確な文字条件として書き出させた。例えば「早番は何時から何時まで」「深夜勤務は連続して何日を超えてはならない」といった具合だ。情報を構造化した上でAIに入力すると、その日のうちにシフト表が生成された。「時には、同僚自身に解決策があるものの、それをどう変換すればよいか分からず、コンサルタント役が傍らで支援し、AIが理解できる言語に変換する必要があるのだ。」
曾明賢氏は、AI責任者の本質的な役割は、AIを活用して組織のワークフローを再構築し、能力を強化することにあると述べる。「従業員に能力を付与して終わりではない」と彼は強調する。AI技術の進化は急速であり、3ヶ月前に習得した技術がすぐに時代遅れになる可能性がある。「もし会社がAIを主要な発展軸と決めたなら、継続的に追跡・研究し、組織の枠組みの中で解決すべき課題を一つひとつ整理する人材が必要だ。」
曾明賢
かつて音楽コミュニティプラットフォーム「StreetVoice」のゼネラルマネージャーを務め、2025年からはUSPACEの初代AI責任者を務めている。これまでに社内でカスタマーサービス、運営、マーケティングなどの部門にまたがる20件以上のAI活用事例を構築し、ツールを独自に開発できる非技術系社員「Vibe Coder」の育成を継続している。
本記事は『經理人 (Manager Today)』より転載許可を得て掲載しています。著者:王毓茹、訳者:葉宇翔。
原題:AI 長上任第一天沒辦公室,先被帶去客服部!USPACE 曾明賢如何讓 AI 在組織落地?