歐姆佳科技(Ohmplus Technology)、6000万台湾ドルのシリーズA資金調達を実施!アレイアンテナからRF半導体テストへ事業拡大、日本の大手メーカーが初の量産顧客に
RFチップおよびアレイアンテナのテストソリューションを専門とする台湾のスタートアップ、歐姆佳科技(Ohmplus Technology)は18日、6,000万台湾ドルのシリーズAラウンドの資金調達を完了したと正式に発表した。本ラウンドは中華開発資本(CDIB)と首席創投(Chief Investment)が主導し、既存株主である国家発展基金(国発ファンド)のエンジェル投資プログラムおよび達盈管理顧問(Darwin Ventures)も追加出資を行った。同社によると、今回の調達資金は量産サプライチェーンの構築、製品の標準化、そして日本およびアジア市場での海外展開の強化に充てられるという。
歐姆佳科技の共同創業者兼CEOである鞠志遠氏は、「当社のシステムが正式な量産ラインに導入された最初の顧客は、日本の大手ICメーカーです」と語る。
2024年に台湾メディア《創業小聚》が同社を取材した際、チームはまだアレイアンテナ領域での顧客開拓に注力していた。なぜ今、半導体市場を主戦場としているのだろうか?
「ディスプレイの色補正」の発想で、アレイアンテナの測定効率を向上
その答えは、同社のコア技術にある。
低軌道衛星や5G通信は、信号の送受信に「フェーズドアレイアンテナ」を依存している。電子制御でビームの方向を瞬時に変えられる現代通信の中核技術だが、最大のボトルネックは「品質テストに膨大な時間と高額な設備コストがかかる」ことだった。
歐姆佳科技はこの課題を解決するため、独自の「OHM+Fastアルゴリズム」とハードウェア・テスターを開発。ソフトウェアの高速演算処理により、1台の機器で複数の信号を同時に受信・テストできる仕組みを作り上げ、「測定効率の大幅な向上」という価値を提供した。
しかし、市場開拓は一筋縄ではいかなかった。COOの何沛明氏は、最大の壁は「顧客の開発リードタイムが長すぎること」だったと振り返る。
アレイアンテナの開発には電波、制御、プログラミングなどの高度な専門知識が求められ、製品化までに1年以上かかることも珍しくない。市場にはすでに製品を発売しているスタートアップも存在するが、少数の顧客だけでは、大規模なテスト・エコシステムをビジネスとして維持するのは困難だった。
日本顧客の一言が、RF半導体市場への扉を開いた
CEOの鞠氏は笑顔で語る。「実は当初、現在の日本の顧客にはアレイアンテナ用のテストソリューションを売り込んでいました。しかし、当社の技術を見た相手から『我々には(RF ICという)巨大な既存市場があり、コスト削減を急務としている。君たちの技術なら応用できるのではないか?』と提案されたのです」
従来の半導体テストでは、ICを1個ずつテストするか、莫大なコストをかけて複数の高額なテスト装置を並行して導入するしかなかった。対して歐姆佳科技のアプローチは、ICを「面単位で一括して」テストするというものだ。1台の機器と独自アルゴリズムを用い、複数デバイスの同時測定を実現した。
つまり、「アレイアンテナ」を検査するためのコア技術は、実はRF IC(アレイアンテナの主要部品のひとつ)にも応用できるのだ。
「当社のテスト速度は従来の複数台体制と遜色ないうえに、設備コストは大幅に削減できます。これこそ、顧客が求めていた『低コストで最高のパフォーマンス』を両立するソリューションです」と何COOは語る。
半導体業界の検証サイクルは非常に長く、顧客は厳しい性能評価や再現性、さらには歐姆佳科技自身の量産能力まで確認する必要がある。しかし、一度この閉鎖的で厳格なサプライチェーンに入り込むことができれば、長期的かつ安定した受注需要が保証される。
標準化製品の開発と「Test-as-a-Service」モデルへの移行
半導体RFテストの世界市場はアレイアンテナを遥かに凌ぐ規模であり、同社にとって商業規模を確立するための強力な成長エンジンとなった。しかし、彼らはアレイアンテナ市場も諦めていない。チームはアレイアンテナ技術が長期的な成長市場であると確信しており、「顧客のアンテナ開発が遅いなら、我々自らがインフラを整備する(橋渡し役になる)」と鞠氏は語る。
同社は昨年末、アレイアンテナの「リファレンスデザイン(公版開発キット)」を正式にリリースし、ハードウェアモジュールとライブラリを顧客に公開した。「MediaTek(メディアテック)がかつて携帯電話のチップセットでやったことと同じです」と鞠氏は説明する。プログラミングの知識さえあれば、ネットワーク機器メーカーは1〜2年かかっていた開発期間を大幅に短縮し、公開版を使ってレーダーや衛星追跡端末を迅速に開発できるようになった。
公開版によって技術のハードルが下がり、アレイアンテナ製品の開発に投資するメーカーが増えれば、最終的に彼らが量産フェーズに入った際、必然的に歐姆佳科技の高速測定機器やサービスの需要も拡大する。
今回の6,000万台湾ドルの調達により、同社は「カスタマイズ案件の受託」から「標準化設備の販売」へとビジネスモデルを大きく転換させた。米中貿易摩擦や関税の問題、そして市場の資金がAI分野に集中している背景もあり、今回の資金調達は容易ではなかったが、チームは目標額の2億台湾ドルに向けて今後も資金調達を続けるという。
将来的には、歐姆佳科技のソフトウェアをハードウェア本体にバンドルして販売し、生産ラインに導入する顧客に対しては、設備価格の10〜15%を保守費用として徴収するサービス契約を結ぶ。「定額制(サブスクリプション型)」のトラブルシューティングとメンテナンスを提供するサービスモデル(Test-as-a-Service)を展開する構えだ。工場のテスト設備は3〜5年で更新サイクルを迎えるため、同社にとって予測可能で安定したロングテール収益の柱となる見込みだ。