台湾配車市場での挑戦

台湾のモビリティサービス「LINE GO」が、配車事業の枠を超えた成長戦略を打ち出している。
裕隆グループ傘下の同社は、2025年10月1日に発表した複数の提携を通じ、飲食・移動・広告・ESGを組み合わせた「生活圏プラットフォーム」構築に乗り出した。
Uberや台湾大車隊など既存大手がしのぎを削る配車市場で、LINE GOは差別化を狙う。

foodpandaと会員経済の融合

最大の注目は、デリバリー大手foodpandaとの連携だ。
ユーザーはLINE GOの利用でfoodpanda proを一定期間無料で享受でき、逆にfoodpanda会員は交通クレジットを獲得できる仕組み。両社は「食」と「移動」という高頻度ニーズを掛け合わせ、会員基盤の相互誘導を目指す。
ただし、特典による短期的な集客が本当に長期的なユーザー定着につながるかは不透明であり、市場関係者からは「継続的な利用動機の創出が鍵」との声もある。

WeMoとの統合で「一站式移動」を強化

9月からは電動バイクシェアのWeMoとも連携し、LINE GOアプリから直接利用できるようになった。
都市部での「ラストワンマイル」問題の解決を狙う取り組みで、飲酒帰宅などタクシー補完需要に応える。
プラットフォーム戦略としては軽資産型を志向し、自前投資よりも外部パートナー連携を拡大する姿勢が鮮明だ。

広告・B2B・ESGへ拡張

さらにLINE GOは、日本企業と提携しタクシー後部座席にディスプレイを導入。広告とEC誘導の新たなチャネルを開く。
企業向けには出張配車管理システムを提供し、CO2排出量を可視化するESGソリューションも展開。2024年時点で累計1,300トン超の削減効果を強調する。
一方で、こうした数値の算定根拠や実効性については検証が必要だ。

市場シェアと収益の現実

同社の利用者は470万人、ドライバー数は1.5万人に達し、台湾市場で第3位を確保する。年間収益は10%成長を続けるが、依然として損益分岐点には届いていない。
林子原総経理は「IPOは資金調達の手段に過ぎず、目的ではない」と述べ、慎重な資本政策を示している。

競争環境と今後の焦点

配車市場はUberが強固なブランド力を持ち、台湾大車隊は地域密着で支持を維持している。LINE GOの戦略は、それらとは異なる「生活圏統合」モデルに活路を求める点にある。
ただし、異業種提携による横展開がどこまでユーザーの定着につながるか、また競合とのシェア争いをどう乗り越えるかは今後の課題だ。

結論：台湾発「Social MaaS」の実験

LINE GOの一連の取り組みは、台湾における新しいプラットフォーム経済モデルの実験といえる。
移動を中核に食・広告・環境を組み合わせ、B2CとB2B双方に展開する試みはユニークだが、その持続可能性は依然未知数である。
グローバルではGrabやGojek、日本のMaaS事例も進展しており、LINE GOが「台湾モデル」をどこまで発展させ輸出できるかが注目される。