製造現場から生まれたAIスタートアップ!日本のCADDiがシリーズD資金調達を完了、「工場向けの部品探し」から評価額12億ドルのユニコーン企業へと躍進
日本の製造業向けAIスタートアップ「CADDi(キャディ)」は9月15日、1億1400万ドルのシリーズD資金調達を完了したと発表した。企業価値は12億ドルに達し、正式にユニコーン企業の仲間入りを果たした。
今回のラウンドには、新規参画のMoore Strategic Ventures、Coreline Ventures、トヨタ傘下のWoven Capital、Salesforce Ventures、およびリクルートホールディングス傘下のCVC HR Tech Fundを含む、計8社の新規・既存投資家が参加した。既存投資家のAtomico、Globis Capital Partners、ゆうちょ銀行(日本郵政銀行)傘下のJPS Growthも引き続き出資を拡大した。
CADDiの共同創業者兼CEOである加藤勇志郎(Yushiro Kato)氏は、今回の調達資金を製品ラインの拡充、3D CADファイルや2D図面などの製造業専用データを理解できるAIモデルの開発に充て、北米を中核としてグローバル展開を推進していくと述べた。
同じく製造業の拠点である台湾にとって、CADDiは参考となる実践的なモデルを提供している。同社は、図面や企業システム、エンジニアの頭の中や経験の中に散在する製造業の知識を、AIが直接理解・活用できるデータに変換し、製品設計から資材調達、生産に至るまでのプロセス改善を支援している。
この新進のユニコーン企業の発展の軌跡を振り返ると、実は一見AIとは無関係に見える部品調達業務から始まっている。
「工場に部品を探す」ことから始まり、思いがけずデータの宝庫を発見
2017年の設立当時、CADDiは製造業者の特殊部品調達を支援するプラットフォームであった。企業が図面をアップロードすると、CADDiが図面の分析を支援し、適切な加工工場をマッチングさせ、見積もり、品質、納期などのプロセスを処理していた。
言い換えれば、当時のCADDiは、現在のAIデータ企業というよりは、「製造業向け調達プラットフォーム」に近い存在であった。しかし、長年にわたり部品の調達に携わってきたことで、CADDiは図面、材料、加工方法、価格、サプライヤー、品質結果の間の関係を把握することができた。これらのデータは単なる「データ」にとどまらず、製造業の意思決定の背景にある思考の脈絡も含まれており、これによりCADDiは他社が容易に模倣できない、製造業のリアルなデータとドメイン知識を蓄積することになった。
そのため、CADDiのその後の変革は、AIをゼロから学習させることではなく、長年にわたり蓄積された製造業の知識を、活用可能な資産として再構築することだった。
加藤勇志郎氏は、CADDiの公式サイトに『Materialization — Making Things in the Age of AI』(AI時代における実体製造)と題した記事を寄稿し、その中で次のように記している。「過去30年間、私たちはビットの世界(bits)を100倍以上高速化させたが、ほとんどの産業における原子の世界(atoms)は、ほぼその場に留まったままである。」
彼は、たとえAIによって思考や理論の生成が1万倍速くなったとしても、量産車の開発に依然として4年を要するのであれば、AIの効果は実世界において希薄化されてしまうと指摘している。そして、このような現象こそがいわゆる「物理的限界(Physical Limits)」である。「物理的限界」の問題を解決するには、デジタルと実世界の進化速度の非対称性を解消しなければならない。
「製造業向けAIデータプラットフォーム」としての新たな位置づけ
2022年、CADDiは「CADDi Drawer」をリリースし、これまで蓄積してきた製造業のデータをソフトウェア製品へと転換し始めた。
このAI駆動型製品は、図面を読み取り、顧客自身のデータベース内で過去に購入した、あるいは在庫にある同一・類似の部品を検索することが可能だ。同時に、関連部品の不良率などの情報も提供し、顧客が既存の在庫を使用すべきか、既存のサプライヤーから再調達すべきか、あるいは新しいサプライヤーを探すべきかを判断するのを支援する。
「CADDi Drawer」のリリース後、その成長速度は当初の部品調達マッチング事業をはるかに上回った。これは、製造業における「図面のデータ化と歴史的知識の検索」に対する強い需要を証明しただけでなく、個々の注文に直接介入するビジネスモデルよりも、高度にスケール可能なソフトウェア製品こそが、生産性のボトルネックを解消する最善の解決策であるという認識をCADDiにもたらした。
その後2024年、CADDiは従来の部品調達・マッチング事業を終了し、部品や組立品の提供を停止して、会社のリソースを製造業向けAIデータプラットフォームへと転換した。すでに取引規模を確立していたスタートアップ企業にとって、これは非常に大きな決断であった。
過去2年間、CADDiは製品ラインを継続的に拡大し、同社が「製造業向けAIデータプラットフォーム」と呼ぶものを段階的に構築してきた。このプラットフォームは、CADファイル、ERP、人事システムなど、企業のシステムを横断するさまざまなデータソースを統合し、データを構造化することで、企業の従業員とAIエージェントの両方が利用できるようにするものである。
従来の「CADDi Drawer」もアップグレードされ、「CADDi Explorer」へと名称変更された。単なる図面検索ツールから、設計、調達、生産、財務システムを横断する「製造業向けナレッジ検索エンジン」へと機能拡張され、さらに「CADDi Agent」のサービスも追加された。
Explorerが人間のために「分散したデータを見つけ出す」検索ツールであるとするなら、CADDi Agentは製造に関する推論能力を備えた「AIアシスタント」のような存在だ。単に受動的に質問に答えるだけでなく、能動的にデータを分析し、意思決定の提案を行うことができる。
CADDi Agentは、全社の調達リストを精査した後、次のように能動的に通知してくれる。「これらはもともと異なる部門で設計された5つの部品ですが、形状がほぼ同じです!これらを同一の仕様に統一して一括調達すれば、コストを20%削減できます。」
さらに、CADDiは特定の製造タスクに特化した6種類のワークフロー製品もリリースしており、従来はベテランエンジニアの経験に依存していた業務プロセスを、AIが支援できるシステムへと転換しようとしている。例えば、「CADDi Design Review」は、過去に類似した部品で発生した問題を参考にし、新しい図面やCADモデルに存在する可能性のあるエラーを自動的に指摘する。
これは、CADDiが解決しようとしている課題が、もはや単なる「企業データの行方不明」にとどまらず、さらに一歩進んで、AIにこれらのデータの背後にある製造ロジックを理解させることにあることを示している。
加藤勇志郎氏は『Fortune』のインタビューで、CADDiは自社開発の独自AIモデルを用いて図面やCADファイルなどの製造業データを分析し、さらに一般的な大規模言語モデル(LLM)を組み合わせて文書や表を処理していると述べ、「LLMを用いて設計チェックを行う例は聞いたことがない。そもそもLLMは図面やCADを理解できないからだ」と語った。
製造業にとって真に重要な情報は、文書や表の中にあるだけでなく、施工図、サプライヤーの選定、品質記録、そして過去の数々の意思決定の中に隠されている。
CADDiは現在、具体的な売上高や顧客数を公表していないが、売上高は毎年倍増するペースで成長していると述べている。米国が中核市場ではあるものの、同社の事業はすでに22カ国に拡大しており、日本の製造業トップ100社のうち、半数以上がCADDiを採用している。また、CADDiの従業員数も2025年初頭の600人から約900人に増加している。