IVS 2026の決勝結果が発表:ブロックチェーンに代わってフィジカルAIが台頭、国際化比率が6割へ。日本のスタートアップ界の新たなトレンドとは?
今年で第20回を迎えたIVS 2026 KyotoのLAUNCHPAD決勝が7月3日に終了した。トップ15に選ばれたスタートアップチームが次々と登壇した末、月面基地の建設と巨大衛星通信アンテナを主力とするSpace Quartersが優勝し、「Startup KYOTO 国際賞」を獲得した。2位から5位は、おひとりさま高齢者向けの身元保証サービスを提供する「Akari Guarantee」、スーパーマーケット用ロボットを手掛ける「MUSE」、トイレ清掃ロボットを開発する「inprog」、そして工場設備の予知保全に切り込む「ZetaX」がそれぞれ続いた。台湾人が共同創業した宇宙スタートアップ「Satelyx」も決勝進出15チームに選出されたが、惜しくもトップ5入りは果たせなかった。
コンテストの結果とは別に、今年のLAUNCHPADには2つの明らかな転換点と、一つ変わらない傾向があった。
国際化の度合いが明らかに上昇
IVSの主催者であり、Headline Asiaの創業者である田中章雄氏は、公式が観察した変化として「グローバル化」を挙げた。かつてIVSの参加者の約9割は日本国内市場のみに注目していたが、今年はグローバル化に焦点を当てたチームの割合が60%以上に急増した。その中には日本を足掛かりにアジア市場への進出を目指す海外チームも少なくない。
決勝進出チームのリストを見てみると、確かに多くのチームがすでに国際的な要素を備えている。台湾の読者にとって最も身近な存在は、共有型軌道上実証衛星サービスを提供する台湾のスタートアップ「Satelyx」だろう。同社は、1回の宇宙試験にかかるコストを1,500万ドルから500万ドルに圧縮し、すでに台湾国家宇宙センター(TASA)と技術導入および衛星に関する提携を開始しているほか、同じビジネスモデルを日本や英国にも横展開している。
さらに徹底した国際化を進めているのが「tamateco」だ。このチームは、日本のカプセルトイ(ガチャ)文化を世界へ広めようとしている。創業者は30年にわたりガチャ業界に深く携わっており、電子決済に対応した次世代ガチャ機を推進中だ。自らを「ガチャ3.0」と称し、日本のガチャ機が100円硬貨しか使えず、海外の海賊版を防げないという長年の課題を解決しようとしている。同社は今回の決勝進出チームの中で、台湾・日本・韓国の3地域に同時に展開している唯一のチームだ。日本は発祥の地であり、韓国ではテスト販売を完了し規模拡大の準備を進めている。台湾ではすでに契約を獲得して世界進出の拠点の一つとして位置づけており、次のステップとしてマレーシアや欧米を視野に入れている。
これに対し、同じく韓国出身のコンパニオントイ(陪伴玩具)チーム「Tofuchan」や、感情認識を売りとする人工知能(AI)チーム「HiStranger」も、いずれも日本市場を主戦場としており、将来的には台湾にも触角を伸ばしたいと考えている。
ブロックチェーンからフィジカルAIへの転換
2つ目の転換点は、フィジカルAI(Physical AI)の爆発的な台頭である。
審査員は総括の中で、ここ十数年の間にIVSは、初期の純粋なインターネットやWeb 2から、Web 3や暗号資産の時代を経て、今やスタートアップの「総合格闘技」へと変貌を遂げたと述べた。ディープテック(Deep Tech)とAIはすでにエントリーの基本条件となっており、真の見どころは、それらがどのように現実の物理世界と融合するかである。
決勝進出リストがその証拠だ。inprogは、トイレの縁や狭いスペースを自ら清掃できるトイレ掃除ロボットを開発しており、ディープラーニングを用いて人の手の接触力をシミュレートし、ツールも自動で交換できる。この動きは、実は今年の米国CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)のトレンドとも類似している。ロボット掃除機から派生した広義の家庭用・業務用サービス向け清掃ロボットが、ロボットや清掃ツールに対する私たちの想像力を大きく広げている。
優勝したSpace Quartersは、建材とロボットシステムをまず宇宙に打ち上げてから組み立てることで、ロケットの積載容量による構造物のサイズ制限を回避し、宇宙での建築コストを従来の10分の1に抑えられると謳っている。3位のMUSEが開発したスーパーマーケット用ロボット「Armo」は、狭い通路に入り込んで商品の運搬、品切れのスキャン、客の動線誘導が可能で、現在米国市場への進出を積極的に進めている。
依然として日本の社会課題に密着
総括すると、これら15社のスタートアップは、依然として日本独自の社会課題にかなり密着している。
最初の課題は高齢化と介護である。2位の「Akari Guarantee」は、「老後のおひとりさま難民」をターゲットに、法律や医療の専門家を集め、血縁関係のない医療・居住の身元保証人を組成。これまで親族に頼らざるを得なかった入院手続き、老人ホーム探し、さらには死後の遺品整理までをすべて代行する。審査員はこれをトイレ清掃ロボットや宇宙建築と並び、今大会で最も重大な社会のペインポイントを解決できる実体的なソリューションであると評価した。
強調すべきは、日本の社会課題は単なる「問題」ではなく、「現象」も包含しているという点だ。「ガチャ3.0」の「tamateco」や、韓国の大人向けパートナーフィギュア「Tofuchan」は、いずれも「キッドルト(Kidult:子供心を失わない大人)」という消費現象に照準を合わせており、大人がおもちゃやフィギュアに喜んでお金を払うように仕向けている。特に日本は膨大な漫画・アニメIPを保有しており、キッドルト市場を発展させるには極めて適した土壌である。
今年のLAUNCHPADからは、日本のスタートアップが現在取り組んでいるテーマの傾向が明確にうかがえる。これは台湾のスタートアップエコシステムが進む方向性とも非常に近く、大いに参考にする価値があるだろう。