特定領域に特化したAI自動運転スタートアップの台湾智慧駕駛（Turing Drive、以下「台智駕」）は、1億5000万台湾ドルのプレAラウンド資金調達を完了したと発表した。本ラウンドはAVA安発永續基金がリードし、日本の自動運転システムTIER IV、台湾の自動車物流企業東立物流、電動バス製造大手創奕能源などの戦略的投資家が参加した。

さらに台智駕は、デジタル発展部デジタル産業署の「AIスタートアップ強化投資実施計画」（国家発展基金を代表）からの投資も獲得し、同計画で初めて公表された投資案件となった。

デジタル発展部の「AIスタートアップ強化投資実施計画」は総額100億台湾ドルで、ベンチャーキャピタルと共同投資を行う。AVA安発エンジェル投資も第一弾で公表された共同投資家の一つである。

台智駕の孫瑀創業者によると、チームは2022年から日本市場に注力し、複数の実証実験と現地協業を完了している。今回の資金はAI自動運転ソフトウェアと製品開発の強化、国際市場展開の加速に充てられ、2026年には日本とシンガポールで大規模な車両展開を開始する予定だ。

特定領域における「AI脳」が台智駕の年間収益を倍増

台智駕は自動運転ソフトウェアのソリューションプロバイダーであり、ハードウェア製造には関与せず、車載システムメーカーや自動車メーカーと提携し、ソフトウェアとハードウェアの統合を通じてAI車両を構築している。

自動運転分野には異なるレベルと応用分野が存在するが、台智駕は「特定任務型自動運転車両（SPVs）」市場に焦点を当てている。具体的には、工場・倉庫・港湾内の自動搬送ニーズに対応する産業用モビリティ、大型キャンパスやリゾートにおける自動運転観光サービス、高齢化社会における公共交通網のカバー不足を補う交通ソリューションなどのシナリオが対象である。

特に注目すべきは最後の項目「僻地のラストワンマイル」の応用である。これまで台智駕のアプリケーションの大半は工場や工業団地などの閉鎖された環境で行われてきた。しかし共同創業者である陳維隆氏は、同社が言う「閉鎖環境」は文字通りの意味ではなく、「リスク」を評価指標とすべきだと強調する。「例えば士林夜市は閉鎖区域ではあるが、内部環境の複雑度が極めて高く、自動運転に対する要求はより厳しい。一方、緑島は開放道路ではあるが、他の車両がほとんどいないため、安全リスクは相対的に低い」と述べた。

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本ラウンドのリード投資家であるAVA安発エンジェル投資の共同創業者兼CEO、方俊傑氏も次のように述べている。この分野は高度にカスタマイズされたソフトウェア・ハードウェア統合と深い現場連携に依存しており、その産業特性は台湾の産業用コンピュータサプライチェーンと高い親和性を持つ。これは台湾産業が最もグローバル競争力を持つ自動運転開発の道筋である。

台智駕の技術中核には、AIソフトウェア「AutoDrive」、エッジコンピューティングユニット「EdgeDriv」、スマートオペレーションシステム「SyncDrive」などのソリューションが含まれ、顧客と共同でAIスマート車両を構築している。現在、台智駕は3年連続で売上高が100％以上成長しており、その50％以上が品質と安全性の要求が極めて高い日本市場からの収益である。

陳維隆氏は、日本の自動運転システム企業TIER IVが投資に参加したことは非常に意義深いと述べた。TIER IVは約400名の従業員を擁する日本の自動運転企業であり、「エンドユーザーの視点から見ると、我々は下請け業者のような立場だ」と陳氏は説明する。台智駕は技術モジュールをTIER IVのシステム製品に組み込み、最終的に自動車メーカー顧客に納品する。この協力モデルの一つの利点は、TIER IVと共に日本以外の海外市場に進出できることで、労力を半分に抑えながら効果を倍増させるビジネス拡大戦略となることを期待している。

ただし陳氏は、この協力モデルは依然として「市場検証」段階に過ぎないと認めつつ、初期成果を得た今、新たな資金はスケールアップ成長に充てられると説明した。

ビジネスモデルは3層構造：自動運転システム開発費、車両量産時のソフトウェアライセンス料（車両台数ベース）、エンドユーザー向けフリート管理システムの月額サブスクリプション料（車両台数ベース）。現在、台智駕の顧客はすべて第1段階のカスタマイズ開発段階にあり、次の目標は第2段階の量産化への移行である。

POCから量産化への鍵となる戦略：「逆方向のビジネス開発」

自動車メーカーの量産化を推進するには、技術の安定性に加え、メーカーの市場タイミング判断がより重要となる。しかし台智駕はエンドユーザーが自律走行車モデルをいつ量産するかを決定できないため、「リバースエンジニアリング」という市場開拓手法を採用している：直接フィールドユーザー（エンドユーザー）と協力し、需要を創出し、下流から上流のメーカーに圧力をかける。

例えば、台智駕の直接顧客はゴルフカートメーカーだが、ゴルフカートのエンドユーザーはゴルフ場である。「自動運転の利便性を実感するユーザーが増えれば増えるほど、彼らは現在の購入先に対して『この機能はありますか？』と問い合わせるようになる」と陳維隆氏は説明する。ディーラーやメーカーが十分な市場需要の圧力を受けた時、初めてメーカーは自動運転技術の導入を検討せざるを得なくなるのだ。

量産目標については、陳維隆氏は「1,000台の量産が実現できれば利益が出せる。日本の大手ゴルフカートメーカー1社の年間世界出荷台数が8万台であることを考えると、この1,000台という目標は実に低いハードルだ」と明かした。

2026年を見据え、台智駕は1月に日本の公道自動運転ライセンスを取得する見込みで、日本でライセンスを取得する初の台湾企業となる。さらに日本とシンガポールで大規模な自動運転車隊の展開を開始すると同時に、北米市場への本格進出も計画しており、台湾のAI自動運転技術を国際市場へ加速的に展開していく方針だ。