もし、自社全体だけでなく製造する製品ごとに、サプライチェーン内の環境・社会リスクを正確に特定できたらどうでしょうか?見落とされた一つの問題が評判の毀損や財務的損失につながる現代において、このレベルの洞察力はますます必要不可欠となっています。aiESGは、人工知能と学術研究を融合したプラットフォームで詳細なESG分析を提供し、この課題に取り組んでいます。
aiESGは2022年、代表取締役の関大吉氏と研究者・教授陣によって設立され、大手銀行や地方自治体を含むクライアントと協業しています。その活動は『日経』や『フォーブス』などのメディアで取り上げられています。
グローバルな視点を持つ研究主導型チーム
aiESGは、馬奈木俊介教授をはじめとする九州大学出身の研究者たちによって設立されました。チームの学術的貢献には、書籍・論文・サステナビリティ分野の継続的研究が含まれる。「当社は九州大学のスピンアウト企業であり、馬奈木教授の研究室は過去20年間、日本を代表するサステナビリティ評価の研究拠点でした」と関大吉は説明する。
関大吉氏にとって、サステナビリティ課題に取り組む動機は個人的な経験にも根ざしている。ミャンマーでの初期のボランティア活動が思考に影響を与えたと語る。「あの経験は本当に考えさせられるものでした。資本主義とは何か、そして自分が持続可能性にどう貢献できるかを考えるきっかけとなったのです」関氏の経歴は学界と産業界の両方にまたがる。物理学者として、そしてアクセンチュア・ジャパンでストラテジストとして働いた後、aiESGを立ち上げる決断をした。「仕事を辞め、今こそ起業し、世界に実際の影響を与える最良のタイミングだと確信しました」
チームにはキーリー・アレクサンダー・竜太 最高研究責任者(CRO)と 武田秀太郎 最高科学顧問(CSO)も加わる。両名とも現役教授であり、関大吉らと共に大学院時代の繋がりを基にaiESGを立ち上げた。「創業メンバーの2人は同じ大学院の出身です。研究の力を全て注いでこの会社を始めた」と関大吉氏は振り返る。現在社員は40名で、約半数がデータサイエンスとサステナビリティの専門家だ。
製品レベルのESG評価とデータ整合性
大半のESGソリューションは企業全体の指標に焦点を当てる。aiESGのプラットフォームは製品・サプライチェーンレベルでの分析を提供する。「当社のソリューションは製品レベルの環境影響を評価できます。例えばTシャツ1枚や自動車1台、その他あらゆる製品・サービスの環境負荷を可視化します」と関大吉氏は説明する。
データダッシュボードはこうした知見を直感的に把握できるよう設計されている。顧客は温室効果ガス排出量、水使用量、強制労働、児童労働などの指標を数千の業種・国別に追跡可能だ。システムは3,290のESG評価データポイントを活用し、国際労働機関(ILO)、経済協力開発機構(OECD)、環境省などのデータベースを参照している。「サステナビリティ研究者が各データベースを一つ一つ確認し、信頼性・透明性・信頼性を検証しました」と関大吉氏は述べた。
このアプローチは実践的な成果をもたらしている。例えば、あるアパレル企業はaiESGを活用して綿の調達先を検証・調整した。「当社のダッシュボードにより、水消費量と社会的影響を削減するため、綿の調達国を変更することができました。データに基づく変革により、持続可能性への影響を大幅に低減できたのです」と関大吉氏は説明する。
導入事例・クライアント・拡大計画
農林中央金庫、ブリヂストン、東京ガスフィナンシャルグループ、八女市など30以上の組織がaiESGのサービスを利用。ISO14064、ISO14067、GHGプロトコルなどの基準準拠を支援。創業以来、年間収益は200%以上増加しているという。
プラットフォームは生成AIを活用した自動レポート生成・ベンチマーク機能を備える。ESG報告書やニュースを分析し、クライアントの報告品質向上、プロセス効率化、ステークホルダーとの効果的なコミュニケーションを支援する。料金体系はクライアントのニーズに応じて設定される。「最低価格は約100万円、最高価格はカスタマイズや規模に応じて2,000万~3,000万円程度」と関大吉氏は明かした。
今後の展望として、aiESGは台湾を皮切りに国際展開を計画している。同社は最近、福岡市の福岡グロースネクストが運営する選抜型スタートアップ支援プログラム「High Growth Program 2025」に選定された。このプログラムは集中的なメンタリングと事業開発リソースを提供し、aiESGのようなスタートアップが能力強化とアジア全域での新たなネットワーク構築を支援する。ハイグロースプログラムへの参加は、台湾を今後の成長の重点地域と位置付けるaiESGの事業拡大戦略の一環である。「現在最も注力している目標の一つは、日本だけでなく世界中で事業を拡大することです。台湾はその第一歩であり、台湾の大企業数社が当社にとって初のグローバルクライアントとなることを期待しています」と関大吉氏は説明した。
企業の社会的責任への期待が高まる中、サステナビリティリスクに関する信頼性の高い詳細な情報へのアクセスは不可欠となっている。aiESGのアプローチは、サプライチェーンから最終製品に至るまで、組織が最大の効果を発揮できる領域を特定する支援にある。新たな圧力や基準に適応する企業にとって、このエビデンスに基づく意思決定への移行は、注目を集める技術と同様に重要な意味を持つだろう。