日本のエンジニアマッチングプラットフォームFindyがシリーズDラウンドの資金調達を完了し、台湾市場へ進出。現地展開の第一歩は、なんと企業の人材採用支援ではなかった?

世界経済フォーラムの2023年の「未来の仕事に関する報告書」によると、世界中の39%の企業がエンジニアやIT技術者の不足を主要な課題の一つとして挙げています。特にAI、大データ、ブロックチェーン、グリーンエネルギーなどの新興分野では、技術者の需要が供給を上回っており、今後5年間でこれらの分野における技術者の需要は約12%から15%増加すると予測されています。
日本のITエンジニア人材プラットフォーム「Findy」は、この問題を解決するために取り組んでいます。FindyはAIを活用して求職者と企業のマッチングやチームの生産管理を支援し、現在20万人のITエンジニアと2300社の企業がプラットフォームに登録しています。
今年6月、FindyはJP Post Investment Corporationのリードにより、205億円(約4.3億台湾ドル)のDラウンド資金調達を完了し、台湾の達盈管顧も投資家の一員となりました。この資金調達を通じて、Findyは正式に台湾市場に進出し、台湾の人材マッチングプラットフォーム「Yourator」との提携も実現しました。
「最初の製品は2人しか使わなかった」Findy創業者が新たなビジネスチャンスを見出す
「私たちの最初の製品は『Findy Score』と呼ばれ、当初はマッチングではなく、求人票(JD)の評価システムを作成しました。求職者が企業の待遇や仕事に対する考えを判断できるようにするものでしたが、結果的に2人しか使用しませんでした」と、Findyの共同創業者である山田裕一郎は笑いながら語ります。
しかし、これは山田裕一郎が直面した最大の挑戦ではありませんでした。
2016年にFindyを設立する前、山田裕一郎はオンライン英語学習プラットフォーム「RareJob」で働いていました。10人のチームから始まり、2014年に成功裏に上場を果たしましたが、その過程で彼は一度、チームのリーダーから一般社員に降格されるという経験をしました。
「新事業の拡大を手助けしようとしたのですが、何度も失敗し、降格されました。その時が私の人生で最も挫折を感じた瞬間でした」と山田裕一郎は述べます。しかし、その低迷期にRareJobの当時のCEOが彼に温かさを感じさせてくれました。「CEOは実際には人ではなく事に対して評価しており、その後の新しい開発プロジェクトでも、彼は私を信じ続けてくれました。」
この経験から、山田裕一郎は新しいビジネスを開発することが容易ではないことを認識しましたが、良いチームを作り、チームの結束力を高めることが企業にとって重要な学問であることを理解し、再び起業しFindyを設立する契機となりました。
山田裕一郎は、Findy Scoreの失敗から新たな機会を見出しました。「この評価モデルを10万件のJDでトレーニングした結果、その50%がエンジニアを求めていることが分かりました。人事担当者やエンジニアとインタビューを行ったところ、彼らはお互いの専門性を理解しておらず、大きなギャップが存在していることが分かりました。そこで、私たちは双方向評価のマッチングプラットフォームに転換しました。」
採用マッチング、プロジェクト管理から学習成長まで、Findyが一手に担当
具体的には、Findyが提供する価値は、エンジニアと企業の間で「適切な人」を見つけるための精度の高いマッチングの機会を増やすことです。
エンジニアの仕事のスキルを評価する際には、プログラミング能力だけでなく、プロジェクト管理、さらにはAI時代においては部門間のコミュニケーション能力や成長計画も含まれます。したがって、Findyは主に5つの製品を展開しています。
- Findy - IT/Webエンジニア転職プラットフォームで、企業とエンジニアの精密なマッチングを支援。
- Findy Freelance - 高度なフリーランスエンジニアのマッチングプラットフォームで、フリーランスエンジニアに案件の機会を提供。
- Findy Team+ - データビジュアライゼーションSaaSで、よりアジャイルで効率的な開発チームを構築。
- Findy Tools - ソフトウェア開発ツールの評価プラットフォームで、エンジニアと企業がソフトウェアツールの機能と効果を評価。
- Findy Conference - 技術セミナーとキュレーションプラットフォームで、業界内外の知識交流を促進。
言い換えれば、Findyは企業がエンジニアを見つけるだけでなく、エンジニアが参加した後もFindyの製品を利用してプロジェクト管理、業務評価、自己学習成長などを行うことができ、マッチングから成長までを一手に担うエンジニアの発展プラットフォームです。
2024年末までに、Findyは20万人以上の登録エンジニアを成功裏に惹きつけ、2300社の企業と提携し、積極的にグローバル市場を拡大し、ITエンジニアのキャリア成長を促進する重要なプラットフォームとなることを目指しています。
Dラウンド資金調達を完了し、正式に台湾市場に進出、AI製品開発に全力投入
今年6月、FindyはJP Post Investment Corporationのリードによる205億円のDラウンド資金調達を完了し、韓国のLB Investment、アメリカのCarbide Ventures Fund、台湾の達盈創投などもこのラウンドに参加し、Findyの資金調達総額は430億円に達しました。
このラウンドの資金調達には2つの大きな目標があります。一つは国際市場、特に台湾と韓国への進出、もう一つは新しいVibe codingのAI製品の開発です。
台湾を選んだ理由は、Findyが半導体分野における台湾の強力な競争力と、AIおよびITエンジニアの巨大な才能のプールを評価しているからです。しかし、Findyが台湾に進出する目的は、現時点では台湾企業や日本企業のエンジニアをマッチングすることではありません。
「私たちはまずSaaSツールでグローバル市場に進出します」と山田裕一郎は述べます。これは、新しい市場の人材と企業にFindyを知ってもらい、Findyが人材育成において本当の価値を持っていることを理解してもらうためです。現時点では、データビジュアライゼーションツール「Findy Team+」とソフトウェア開発ツール評価プラットフォーム「Findy Tools」が台湾市場に優先的に進出する製品となります。
「今後、台湾のAI TAIWAN未来ビジネス展にも参加し、特にAIネイティブなスタートアップやAIソリューションを積極的に探している企業との新たなパートナーシップや潜在顧客を見つけられることを期待しています」と山田裕一郎は語ります。