「ホテルの朝食の時間を教えてくれますか？」「はい、朝食の時間は午前6時から10時までです。」

この質問に答えたのはホテルのフロントではなく、スマートスピーカー「シャオメイシー」です。このシーンは、世界中の210のホテル、2万室の客室で実現可能であり、日本の西武プリンスホテル＆リゾート、世界的に有名なミレニアムホテルグループ、台湾のテンチェンホテルグループ、シーザーホテルチェーンなどが含まれています。

これを可能にしたのは、2019年に設立されたAIスタートアップ「犀動智能」です。生成AIの波が来る前から、犀動智能はAI音声と意味処理の分野に進出しており、OpenAIからの認可を受けた世界初の5社のうちの1社です。これは、犀動智能の創業者兼CEOである沈書緯の経歴に関係しています。

沈書緯は以前、GoogleでGoogle Homeスマートスピーカー、Google Assistant音声アシスタントのNLU（自然言語理解）プロジェクトを担当していました。その時からAIの可能性に注目していました。「NLUはコンピュータに話し方を教えることです。そして、宿泊業は人による収益が重要な産業です。ここに導入すれば非常に価値があるでしょう。」と沈書緯は語ります。

日本経済新聞によると、日本の飲食宿泊業は回復しています。2024年6月には雇用人口が400万人に達しましたが、2019年のパンデミック前の421万人にはまだ及びません。多くの業者は人手不足のため、空室を維持しています。

NLPモデルの基盤、「シャオメイシー」は人間のように理解し、応答する

2019年、犀動智能はGoogleのオープンソース技術BERTを使用してスマートスピーカー「シャオメイシー」を開発しました。ゲストからの質問を受け取ると、データベース内の事前に設定された質問と回答を見つけて応答します。BERTとChatGPTはどちらもTransformerアーキテクチャに基づくNLPモデル（自然言語処理）であり、応答はより人間らしくなります。

言語モデルの発展に伴い、犀動智能はさらに多くのモデルを導入して最適化を行いました。例えば、GoogleのLaMDA、大型言語モデルBLOOM、現在のGPT言語モデルなどです。これにより、体験はますます向上しています。

しかし、沈書緯は「シャオメイシー」が処理できるのは質問応答だけであり、「タオルを補充してほしい」といった問題は最終的に人間が解決しなければならないことに気付きました。これが犀動智能が第2の製品「Aiello-One」ワンストップ宿泊SaaS管理プラットフォームを開発するきっかけとなりました。

Aiello-Oneは、後段の「行動をとる」を解決します。つまり、ゲストが要求をした後、「シャオメイシー」はまず意味理解を行い、その要求を「Aiello-One」に進め、バックエンドでルームサービスの清掃、日用品の補充、食事の配達などの任務を直接割り当てます。LINEやトランシーバーなどのコミュニケーション方法を使用する過去と比較して、「Aiello-One」はルームサービスの運用効率を向上させ、さらに運営分析を行うことができます。

AIで「適材適所」、3つのステップでゲストの大小の問題に対応

製品の開発に伴い、沈書緯は現段階のAIサービスはモデルの競争ではなく、AIが正確な行動を取れるかどうかが重要だと考えています。

ゲストの特定の問題に対して、AIモデルが即座に正確に回答し、行動を取れるかどうかには3つの重要なステップがあります：適切なモデルの選択、根拠のあるコンテンツ、クラウドシステムの接続です。

「モデルの選択」とは、適用シーンに基づいて最適なモデルを見つけることを指します。沈書緯は例を挙げます。大型言語モデルWhisperの利点は音声から文字への変換精度が高いことです。一方、Streamingは音声から文字への変換速度が速いです。したがって、前者はチェックイン前後の電話カスタマーサービスの分析に適しており、後者はチェックイン期間中のカスタマーサービスに適しています。キーワードに基づいて即時に応答する必要があるからです。「私たちは創業初日から分類器（classifier）を自作しており、継続的に最適化しています。分類には時間がかかるため、時間差を減らすことが重要です。」

適切なモデルを選択した後、モデルが生成する回答は夢のようであってはならないため、各ホテルの情報、規定、処理原則を生成過程に組み込む必要があります。沈書緯は、犀動智能がすでに2,000万件のデータを蓄積しており、これらのデータと過去に書かれたスクリプトを使用してトレーニングとテストを行い、回答の正確性を確保していると述べています。

音声応答で完了できない要求がある場合、タスクの割り当てを行う必要があります。そのため、行動を起動するAPIアプリケーションインターフェースとクラウドサービスはモデル自体よりも重要です。「どのモデルを使用してゲストの質問を理解し、回答しても、最終的には要求をホテルのバックエンドに報告し、業者が状況を理解して行動を取る必要があります。これが私たちがワンストップ宿泊SaaS管理プラットフォームを作る理由です。」と沈書緯は語ります。

犀動智能のサービスは宿泊業だけでなく、介護分野にも応用可能です。例えば、患者が病床でサービス要求をする場面は客室の要求に似ています。沈書緯は、介護サービスは台湾が将来直面する課題であり、犀動智能もこの分野に少しずつ進出する予定だと説明します。

しかし、現在のところ、犀動智能は宿泊業の発展に注力しており、大型ホテルグループがその努力の目標です。「グループ認定を取得すれば、私たちのAIは宿泊業の標準サービスとなり、アメリカとオーストラリア市場に進出する大きなチャンスが得られます。」と沈書緯は語ります。犀動智能はホテルの規模と開設された機能数を単位としてサブスクリプション料金を設定しており、2025年の目標は損益分岐点に到達することです。

犀動智能

創業者兼CEO：沈書緯
設立：2019年
製品・サービス：一站式AI SaaS平台
投資家：Cornerstone Ventures、JAFCO Asia、Wistron など、累計調達額は1,600万ドル

責任編集者：蘇柔瑋

本文は《數位時代》の許可を得て転載しています。，著者：曾令懷，原題：AI音箱成飯店新寵！犀動智能「小美犀」攻入全球2萬間房，日本西武王子飯店也買單