「私の人生の中で、ツールを作りたい。それは学生がアリストテレスの著作を読むだけでなく、彼に質問し、答えを得ることができるツールだ。」1985年のスティーブ・ジョブズの講演は、未来のAIの姿を予見していました。

40年前、ジョブズはこのような未来を想像することしかできませんでしたが、40年後、AI日記ソフト「Life Note」はジョブズの構想を現実のものとしました。

Life Note：「最も賢いパートナーになる」

AI日記ソフト「Life Note」は、一般的な日記ソフトと似ています。生活の出来事やその時の感情、悩み、記憶に残る瞬間を書き留めることができます。

ただし、これを書き終えるとすぐに「著名人」からの返信があります。

ドロップダウンメニューから、対話したい著名人を選ぶことができます。選べる人物は、宗教的な偉人であるブッダやイエス・キリスト、思想家、作家、ビジネスパーソンなど、古今東西のクラシックな偉人たちです。もちろん、ジョブズが夢見たアリストテレスもリストに含まれています。この人物は「人生の導師」となり、あなたの毎日を共に過ごします。

「Life Noteは、魂の使命を見つけ、内面を探求し、自分の意味を見出す手助けをします。それにより、より力強く創造することができるのです。」と、Life Noteの創設者である陳韋亘（チェン・ウェイゲン）は彼の製品をこう説明します。

問題は、どうやってこれらの著名人の個性や思想を再現するかです。

Life NoteはOpenAIやClaudeの言語モデルを活用しており、システムがインターネット上で著名人に関連する情報を収集し、それぞれの人生の導師を専門分野や適した話題に分類します。数秒以内にLife Noteは日記を分析し、「最適なマッチング」を見つけ、その著名人の視点で返信を生成します。まるで本当に通信しているかのように、日記に関連する個人的な逸話や、現在の悩みに対するアドバイス、思考の方向性、あるいは出来事に対する異なる見解を提供します。

ユーザーが日記に「起業」に関する内容を入力すると、システムはジョブズやマスク、またはYC創設者のポール・グレアムなど起業に関連する成功者を名人リストの上位に配置するかもしれません。もしユーザーが仕事によるパニック症状を記述した場合、システムは20世紀の心理学者カール・ロジャーズを呼び出し、ユーザーを慰め、反省を促す質問を提供します。ただし、ユーザーは自分のニーズに応じて対象を調整することも可能です。

この使用状況は海外のCharacter.aiと非常に似ていますが、過去にCharacter.aiは青少年を自殺に誘導する事例が発生したことがあります。Life Noteのチャット設定は、正のフィードバックや心の伴侶としての方向性に基づいており、Character.aiのような単なる雑談形式ではありません。

Life Noteはユーザーが記録した各感情を自動的に判別し、喜び、冷静、怒り、悲しみなど10種類の感情に分類し、さらに細かく分解します。

さらに、Life Noteの記憶機能はChatGPTよりも強力です。一定期間が経過すると、Life Noteはその期間中のユーザーの感情を分析し、特定のテーマや人物、事物に対する感情を表示します。陳韋亘は自分のページを公開し、「起業について日記に書くときはいつも興奮しているが、科学について話すと冷静になることがわかる」と述べています。

また、心の導師と個別に対話したい場合、必ずしもノート形式を通じる必要はなく、メッセージアプリのようにメッセージを送信することも可能です。たとえば、陳韋亘は最近仏教の経典を読みたいと思い、仏陀とのチャットウィンドウを開き、推薦書リストを尋ね、どの本から読み始めるべきか、今の自分に適した仏教経典を教えてもらうこともできます。「YCの創設者やジョブズと起業について話すのが好きで、いつもインスパイアされます！」と陳韋亘は言います。

勇敢に退職し、心の豊かさを見つける

退学の経験があるため、陳韋亘はジョブズと多くの共鳴点を持っています。

自由で開放的な性格のため、陳韋亘は台湾の過去の厳しい教育制度と相容れず、退学後にアメリカへ留学することを決意しました。「誰も管理しない」環境で、陳韋亘は奮起してワシントン大学に合格し、バークレー大学の大学院に進学しました。専攻のコンピュータ工学のほか、歴史や哲学などの文系科目も履修しました。

多くの年をテクノロジー業界で過ごし、フィンテック製品を手掛けた陳韋亘は、環境が常に生産性を急速に推進し、製品が早く商業化されることを望んでいることに気付きました。しかし、彼の本質はそうではありません。「私は、物事をすることにもっと意味を持たせることができると感じています。あるいは、心の豊かさが重要だと考えています。これは物質的な豊かさを否定するわけではありませんが、追求する価値のある他のものがあると感じています」と彼は言います。

2014年、陳韋亘は『ジョブズ伝』を読んで感動し、心の成長という考えが芽生え始めました。それ以来、ジョブズの足跡をたどり、瞑想や禅修、メディテーションに取り組むようになり、ジョブズの理念や資料に触れるようになりました。

10年の修行を経て、陳韋亘は会社を辞め、どのように彼の愛するテクノロジー、AI、プログラミングと彼が重視する内面の成長を結びつけ、現代社会によって空洞化された自己を満たすかを考え始めました。

この期間、陳韋亘は瞑想の習慣を続け、「自由な書き物」を試みて内面と対話し、これが彼の起業の始まりとなりました。彼は自分に問いかけました。「数ヶ月書き続けて、体が軽くなり、毎日がより力強く感じられました。この内面的な探求の方法をAIと結びつけ、多くの人を助けることはできないだろうか？」

最初、彼は会社を「スピリチュアル・ヒューマン」と名付けました。「これはジョブズの精神にも合致します。彼は当時、『Think Different』というマーケティングキャンペーンを行い、ピカソやビートルズ、マイルス・デイヴィス（ジャズの巨星）など、当代の最も優れた思想家や芸術家に敬意を表しました」と、ジョブズに深い影響を受けた陳韋亘は説明します。「私がやりたいことは、これらの『スピリチュアルな人々』に敬意を表することです。」

理想はあったものの、陳韋亘の起業の最初の半年はユーザーが少なく、さまざまな機能を試みても、なかなか受け手のニーズに合った機能が見つかりませんでした。2024年の後半に、Life Noteを使用して人生に希望を見出したというユーザーのフィードバックを受け、彼は製品の主軸を見つけました。人々が必要としているのは、単なるAIによる日記内容の分析ではなく、「人生の導師」としての役割を果たし、製品を通じて知恵を提供することでした。

YCへの応募を検討、ユーザー体験の向上を目指す

Life NoteはProduct Huntプラットフォームで「Product of the Day」の第4位を獲得し、このAI日記ツールに対する市場の関心を示しています。陳韋亘は、この成果は完全にオーガニックな成長の結果であり、大量のマーケティング資源を投入せず、製品自体の口コミによるものだと述べています。「2024年の終わりには、製品の満足度は4.6点に達し、他の日記ソフト（Day OneやNotionなど）から多くのユーザーがLife Noteに移行し始めました」と彼は言います。

現在、彼らのユーザーは主にアメリカと台湾に分布しており、それぞれ約30%を占めています。残りのユーザーはヨーロッパなどの地域に分布しています。

将来の展開について、陳韋亘はY Combinator（以下YC）への参加を検討しています。彼は、YCの核心哲学である「Make something people want」がLife Noteの目標と一致していると述べています。また、「現在の製品と内部データは、いくつかのYC卒業のスタートアップの初期段階の状況と似ているので、確かに考慮しています」とも言います。ただし、現在のユーザー数や他の関連する正確なデータについては明らかにしておらず、Life Noteのユーザーはこれまでに2万件の日記を書いています。

現在、Life Noteの資金源は会員のサブスクリプション料金のみです。価格は月額サブスクリプションが4.99ドル（約164.29台湾ドル）で、年額サブスクリプションが59.99ドル（約1,975.11台湾ドル）です。彼は、現在最も重要なのは製品体験の向上を続けることであり、単に成長を加速することではないと強調しています。「YCに参加できればもちろん嬉しいですが、今のところそれが最も重要な目標ではありません」と彼は説明します。将来的にエンジェルラウンド（Angel Round）での資金調達を検討するかどうかについては、「今年の目標は現在のビジネスモデルを通じてですが、将来的な資金調達を排除するわけではありません」と慎重に答えました。

製品体験の向上に関する目標には、3つの明確な方向性があります。彼は、AIコンテンツの検証メカニズムを強化し、著名人の返信の正確性を確保し、コンテンツファームの使用を避け、事実の正確性を向上させることを望んでいます。また、目標設定機能も改善の方向性です。AIは異なるユーザーのニーズに基づいて、個人の特性により適した提案を提供します。Life Noteは記憶機能も強化する予定です。陳韋亘は、AIがユーザーの日記内容を記録するだけでなく、感情の変化をより深く追跡し、導師の返信をより個人化し、各対話がより実際の心理的ニーズに近づくようにしたいと考えています。それによって単なるテキスト返信ではなくなります。

会社情報

会社名：Life Note
設立年：2024年
製品名：Life Note
公式ウェブサイト