MarTech企業のAppierは2月14日に2024年度の業績を発表し、売上高が341億円に達し、過去最高を記録しました（前年比29%増）。これは、2021年度の127億円から約2.7倍の成長を遂げたことを意味します。

成長の主な原動力は、アメリカとEMEA地域からのもので（前年比45%増）、最大の市場である東北アジアも前年比34%の成長を見せました。デジタルコンテンツ（ゲームなど）とEコマースが依然として主要な成長分野です。

Appierは今後も売上高が急速に成長すると楽観視しており、2027年度には売上高が700億円に達することを予測しています。

しかし、この業績発表会で注目すべきは、「一つの数字」と「一つの概念」です。

一つの数字：年間で社員は「2人」増加、AIによる効率向上

ず注目すべきは、Appierの社員数です。2024年度の社員数は708人で、前年の706人からわずか2人の増加にとどまりました。Appierはこれまで社員数の増加を抑制してきましたが、過去5年間では最低でも年間45人の増加がありました。

AppierのCEOで共同創設者の游直翰氏は、2024年度の社員数の増加が非常に少ない理由として、AIが社員の効率を向上させ、採用の必要性を抑制したことを挙げています。「AppierではすでにエンジニアとAIが共同で開発する製品があり、今後はソフトウェアエンジニアにおいて、AIと協力して開発できる人材を求めます」と述べました。

エンジニア以外の運営面でもAIが導入され、効率向上を図っています。Appierは以前の発表で、人事や財務などの部門でAIツールを使って作業を加速していると述べています。

AIが人材を代替するという考え方ではなく、既存の人材がAIを活用してより強力になるという考え方が、特にソフトウェアエンジニアの分野で顕著に見られます。

AIスタートアップのAnthropicが2025年2月10日に発表した報告によれば、100万件のClaude対話を分析した結果、37.2%の質問がコンピューターと数学の分野からのものであり、この分野の労働者はアメリカの労働人口の3.4%に過ぎないとしています。

当然、言語モデルとチャットボットには制限があり、もともとコンピューターと数学の質問に答えるのが得意ですが、この数字は「非常に少数の人々が大量にAIを利用している」ことを示しています。この人々が最も影響を受ける領域であり、Appierの社員数の状況を反映しています。特に游直翰氏が言及したエンジニアの分野では、AIによって既存の人材がより強力で効率的になり、より多くの仕事をこなせるようになっています。

これは始まりに過ぎません。

一つの概念：モデル競争がアプリケーション層に利益をもたらす

次に注目すべきは、Appierが3,870万ドル（約12.7億）で買収したフランスのスタートアップ企業AdCreative.aiです。この企業は「生成的クリエイティブ素材」に特化しており、例えばリップスティックの背景を変更したり、ハンバーガーの動的広告の背景を生成したり、インタラクティブな広告素材を生成したりできます。

実際、静的な製品背景の置き換えはAppierでも同様の技術があります。「我々にはこの技術がありますが、AdCreative.aiほど細かくはありません。特に動的な映像は我々にはありません。AdCreative.aiを使うことで、ゼロから始める必要がなくなります」と游直翰氏は述べています。

重要なのは、AdCreative.aiの顧客の多くが消費財であり、Appierの従来の顧客タイプとは非常に異なるということです。「我々はオーディエンスのデータを持ち、AdCreative.aiはこれらの（クリエイティブ）素材のデータを持っています」。

AIエコシステムをハードウェア層、基礎モデル/共通層、アプリケーション層に分けると、Appierはアプリケーション層に位置しています。台湾のソフトウェア企業の多くもアプリケーション層に位置しています（SIを考慮しない場合）。

なぜAppierはフランス企業を買収したのでしょうか？

DeepSeekの登場により、AIエコシステムに「お買い得感」をもたらしました。API費用が安くなり、オープンソースモデルが増加しています。「より低コストでより良いモデルを手に入れることができ、顧客がパフォーマンス向上に対して支払うとき、モデルの費用が下がることで、アプリケーション層はより多くの利益を得ることができます」と游直翰氏は述べています。

AIアプリケーションがすでに多様化していると思われるかもしれませんが、爆発的な成長は続いています。「このようなトレンドは、成長期にあるアプリケーション層の企業にとって非常に有益です」と游直翰氏は述べています。

アプリケーション層の競争において、鍵となるのは「データの壁」、「領域知識」、「産業モデル」です。これが、AppierがAdCreative.aiを買収した理由を説明しています。AI技術の進化に伴い、AdCreative.aiのような技術はいつか手に入りやすくなるでしょう。毎日、中国やアメリカはより先進的な画像生成モデルを発表していますが、各アプリケーション層が持つデータ、知識、調整されたモデルが差別化サービスの核心となります。

Appierの年次売上高は再び新高値を更新し、2027年度の700億円という目標も野心的ですが、本当に注目すべきはこれらの「明白な」財務成果ではなく、AI革命の中でどのように自らを調整しているかです。これらの詳細は、財務報告書の数字よりも、AIが企業や産業の運営方法をどのように変えるかを示しています。

責任編集：林美欣

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